この体験談は、3年前、祖母の葬儀が大阪の斎場で行われた時の話です。80歳で亡くなった祖母は、私の母親と犬猿の仲でした。若い頃から仲が悪かったらしく、どんなことに対しても毒を吐く祖母の性格が原因のようでした。2人が喧嘩する時、祖母はよく、「もう早くしにてぇよ」と口癖のように言っていました。
いざ祖母が亡くなると、母親は「もう喧嘩相手がいないじゃん」と悲しんでいました。誰にも見つからないように、自分の部屋で泣いていたのも知っています。愛と憎しみは表裏一体といいますが、まさにその関係だったのかもしれません。
葬儀の際、母親はただ一点を見つめるように、静かに座っていました。もう泣くことはありませんでしたが、どんよりとした表情を見て、私の心がチクチクと痛みました。もう2人の喧嘩を見ることはできないんだ、と思うと涙が込み上げてきました。
一通り終わり、いざ会場を出ようとした時、祖母の旧友だと思われるおばあちゃんがこちらにやって来ました。そしていきなり、「あんたの話はよく聞いてたよ。しんじゃって嬉しいかい?もう喧嘩しなくていいもんな!」という嫌味を投げかけてきたのです。「ふざけるな!」と一瞬にして喧嘩になりました。
静かな会場は急にざわつき、何人もの人が止めに入りました。なんとかその場は収まりましたが、場の空気は最悪です。そのおばあちゃんの言いたいことも分かりますが、あのタイミングでは絶対言うべきではなかったと思います。そもそも、祖母と母親の2人にしか分からない、特殊な関係でしたから…葬儀でトラブルが発生した後、母親はただただ悲しんでいました。今でも当時の葬儀の話がたまに出ます。軽いトラウマになっているのかもしれません。