母がこの世を去ったのは88歳の時。
ほぼ天寿を全うしたといっていいでしょう。
自宅は田舎の方にあるためけっこう広く、葬儀屋さんに聞いてみたところ自宅葬も十分可能ということなので、自宅葬で送ることにしました。
準備を始めたところ、近所の人たちが続々とやってきました。
男性は庭にテントを張る準備をしたり、椅子をかき集めてきたり、女性は鍋や食器などを持ち込んで早くも料理の準備を始めています。
こちらとしては頼んだ覚えもないので驚くとともに、田舎の方ではまだ助け合いの精神が残っているのだなと感激しました。
お通夜、葬儀のお知らせをしたのは親類縁者だけだったのですが、実際には300名近くが焼香に来てくれました。
母が小学校の先生をしていた関係で、なかには教え子さんもけっこういるようでした。
ちょうど桜の時期で、祭壇のわきから庭を見ると、お線香の煙を通して花が美しく咲き乱れているのが目に入ったのを覚えています。
母は生前、父といっしょに作り上げたこの家が大好きでした。
その家で心優しい近所の人々や、いつになってもわが子のようにかわいい教え子、そして可憐なピンクの桜に見守られて旅だった母。
自宅葬にして本当に良かったと思います。
そしてこの葬儀は悲しみよりも、いい思い出として私の心に残っています。